2014年12月16日火曜日

声を当てるポジションは前か後ろか?

声を当てるポジションを前にするか後ろにするかで悩んでいないでしょうか?
日本では「声は奥から回して前で響かせる」と声の道筋を作って発声している人が(特に女声に)非常に多いように感じます。
実際にこのような出し方をしている人の声を間近で聴くと、確かに喉はよく開いており、響きも前に集まっているように感じます。小さなホールで聴いても安定した声と感じさせられる声です。

舞台が世界に移ると、この印象は大分変わってきます。
欧米や韓国、中国の歌手を聴くと、確かに声を後ろから回しているように喉が開いて、顔の前に響きが集まっているように感じます。一見同じ事をしているように 思える日本人の歌手を同じ舞台で聴くと声質が云々というより、響きが身体から離れきっていない印象をどうしても受けてしまいます。特に男性歌手でこのような出し方をしている人は上の5線の近くの音になると、他の国の歌手とはかけ離れた、全く異質な声を出していると感じざるを得ません。
女性ではこのパッサッジョ付近の音域で男性ほどの不自然さを感じることはありませんが、その事が逆に、外国人歌手との差を歌っている当人に感じにくくさせている要因になっているような気がします。
もっとも、この日本人歌手も日本人だけに囲まれて歌っていれば、そのような印象を聴衆に与えないで、もっと高い評価を得られるのでしょうが・・・・・・・~_~;

声を当てるポジションの前後関係というのは『結果的に感じる感覚』であって、"当てよう" とするものではありません。
"意識的に" 声を当てる場所は存在してはいけないのです。
結果的に『歯の裏に当たっている』『外で鳴っている』『軟口蓋が上がっていた』といった様々な感覚により前や後ろに感じるからといって、その経路を辿るような出し方をしていたのでは欧米人のようなインパクトのある立体感のある声を出すことは出来ません。

私はレッスンをしていて「すぐに外!」という表現をよく使うのですが、分析するのが大好きな人は、声の経路を省いたその説明だけでは仲々納得してくれません。
現在主流となっている横隔膜の使い方や喉周りに注視する方法で習われている方々には殆ど理解して頂けない変な自信もあります。(^◇^;)

「すぐに外!」でなければならない理由を納得して理解してもらうには、本番で思うように歌えなかった時の状態を思い出してもらうのが一番です。
お客様を前にして息や声の伝達経路を確認しながら歌えば必ず声の問題が起こります。
その原因を体調不良や、テクニックの欠陥に結びつける前に絶対に考えなければならないことがあります。

「テクニックを考えずに感情に委ねて歌えていたか?」

もし答えがYesならば声は「すぐに外!」だったに違いありません。
逆に、歌った本人がテクニックを考えずに感情だけで歌えたと思っていても、聴いた人がそう感じなかったとしたら、歌い手側に感情以外のテクニックについての何らかの意識が芽生えていた証拠です。

「すぐに外!」が意味する外とは "身体の外" ではなく、「声のポジションは前か後ろか?」と考える "思考の外" なのです。

http://belcanto.jpn.com



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