2014年12月11日木曜日

レッスン室の音響について

声楽家を志す学生が、日々の練習で使う音楽学校の練習室をご存知でしょうか?
二、三畳ほどの空間にアップライトピアノが一台置かれており、残った一、二畳ほどの空間の中で学生は日々発声練習を行っています。
私はかねてから、学校が声楽の練習にこのような狭い練習室を使用させる事に疑問を持ち続けていました。
学校によっては練習室の使用料に金額を上乗せすれば、広い部屋を貸し出してくれるところもありますが、経済的負担から、ほとんどの学生は狭い練習室の中で練習をしています。その結果がもたらすのは「練習室の中でだけ存在感のある声」いわゆる "傍鳴りの声" の完成に他なりません。

私が学生だった時、あるプロ歌手のお宅にお邪魔し、スタジオのように広く豪華な練習室に驚かされた事がありました。当時自分が住んでいたボロアパートでは声出しも出来なかった為、学校の狭い練習室が私の "声を作る場"でした。まだ声楽の勉強を始めて間もなかったにも拘らず、「こういった環境で声も将来も決まるのかなあ〜」などと漠然とした不安を感じた事を思い出します。

今考えてみると、実家から通っていた学生は殆ど学校の練習室を使っていなかったように思います。恐らく彼らの家には防音の施された大きな部屋があったのでしょう。
声楽の場合、良い先生に巡り合える事と同様に、練習室の環境は非常に重要で、組み立て式防音室の狭小空間や、狭い練習室の中では大劇場で必要になる頭声の感覚をマスターする事が極めて難しくなってしまいます。ある程度の広さがあり、残響が多すぎない部屋の方が正しい声のポジションを掴むには絶対に有利なのです。

狭小空間で練習するくらいならば、私はカラオケボックスが安く使える時間帯に行って練習する事をお勧めします。下手に防音付きの部屋を借りるより安く済み、会社勤めの人なら仕事帰りに寄って発声をする事で声を磨き上げる事が出来ます。そうやって努力を続けた人達がオーディションやコンクールに挑めるような環境が実現出来れば、日本の声楽を取り巻く環境はもっと盛り上がっていくのではないでしょうか。
http://belcanto.jpn.com

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