2015年3月9日月曜日

頭声と胸声、falsettoとmezzavoce

「頭声」「胸声」という呼称が相応しいものなのか疑問ですが、声は大きく分けるとこの2つに分類されます。
頭声とファルセットを同一に扱っている教本を時々見かけますが、これは大きな間違いです。

ファルセット(falsetto)のfalseとは「偽物の」という意味ですが、単独では弱々しいものでしかないこの意識を、正しい共鳴のポジションに作用させる事が出来るようになると、喉に負担のない声を会得することが出来ます。この声こそがベルカント唱法で言う本当の頭声で、響きの良いホールで歌えば、胸声のような量感を伴った声として客席に届くように出来ているのです。正しい頭声のポジションで作られた声は鼻をつまんでも音色が殆ど変わりません。

一方、mezzavoceのmezzaとは(半分の)という意味で、声を100パーセント鳴らすのではなく、息を半分混ぜるような感覚で弱声のニュアンスを出すテクニックとされています。
男声、特にテノールではこのfalsettoとmezzavoceの違いについて良く議論が交わされますが、聴いているだけでその違いを判別するにはかなりの年季が必要です。

私もイタリアで古いベルカント唱法に出会う迄は、このmezzavoceのテクニックがどう行われているのか、どうしても理解することが出来ませんでした。
実際にmezzavoceと思しき声を出している一流歌手がこの種のテクニックについてコメントしているのを聞くと、ファルセットやファルセットーネという単語が頻繁に使われており、彼らの感覚の中には「息を半分混ぜるような感覚」が無いことを窺い知ることが出来ます。頭声の感覚をつかめていない歌手にはこの感覚は決して理解出来ない筈です。

私のレッスンではこの頭声を掴む為のポジションとピッチは吸気の時点で確保するように指導します。
最初の内はどの生徒さんも戸惑われますが、一旦身に付けることができると、それまでの声の出し方が如何に喉に負担を与えていたかを実感するようで、「末長きお付き合いを!!」と依頼されます。
私が生きている意味を最も感じられる瞬間です。(^○^)

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