2015年3月17日火曜日

喉が温まった感覚とハミングのポジション

ハミングの練習を軽く考えている人は意外と多いようです。
レッスンで「ハミングはどのように教わりましたか?」と質問しても、その方法を習った事のある人は殆どいません。

ハミングで発した響きが正しいポジションに共鳴していれば、その後に続く実際に声を発するレッスンは順調に進んでいきます。
正しいハミングの響きが掴めていないのに声をむやみに出させても声を疲弊させ、習得を遅らせるだけです。

今迄私がレッスンをする中で「ハミング(Humming)してみて下さい」とお願いした所、殆ど全ての人が喉を閉めた状態で小鼻に抜くような音で響かせていました。人によっては息を飲む様であったり、響きが全く無いまま単に『N』の音を出しているだけの場合もありました。

歴代の偉大な歌手はハミングによる練習の価値を大いに認めていると言われています。
まだイタリアに留学する前の20代後半の頃迄、私はこの意味が正直あまり良く理解出来ていませんでした。
例えば本番で歌う前、発声練習をある程度行い、喉が温まった感覚が無いと安心して声を出すことができず、発声練習を全く行わないで適当なハミングだけを行って直ぐに舞台に出て行く歌手が不思議でなりませんでした。

『喉が温まった感覚』とは紛れもなく、喉に負担を与え続けた結果です。
正しいハミングのポジションから外れたポジションで歌った時に感じる症状であり、声が喉の何処かでブロックされている証なのです。
起床時以外で『喉が温まっていない』と感じるのは緊張や不安で喉が閉まっている状態の時が多く、その為に発声練習を行って『喉が温まった』と感じるのは、間違ったポジションか喉が完全に開いていない状態で声を出し続けたからなのです。

本番前は楽屋で発声練習を黙々と行うより、軽いお喋りでもしてリラックスした後、正しいハミングでポジションを確保する練習をした方が本番では遥かに良い結果を生みます。入念な発声練習を行うのは自宅で声を目覚めさせる時と、本番迄にうたた寝をしてしまった時ぐらいで、直前の発声練習で無駄に声を消費するより直前のハミングで声の通路を確保してやれば充分なのです。

感覚や経験に頼るのではなく、歴代の名歌手が認めている方法を尊重する事は非常に重要な事だと私は思います。
一番騙しやすい人間は何時でも自分自身です。

http://tamadeseigaku.com




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