パッサッジョの音域で使われるcoperto(コペルト:覆う)とchiuso(キューゾ:閉める)というイタリア語は非常に混同しやすい単語で、使っているイタリア人の指導者ですら同義語として扱っている例が少なくありません。
日本人指導者もイタリア人の名歌手も同じように『chiuso!! 』と指導をしていますが、同じ単語でも日本人とイタリア人ではテクニックの意味合いが少し異なります。
多くの日本人指導者の解釈でキューゾが意味する所は、aperto(アペルト:喉を開ける)の対義語として位置付けられるもので、パッサッジョの音域を若干喉を閉め気味にして、coperto(コペルト:覆う)ように出していくというものです。
イタリアの指導者が使っている「chiuso !!」はちょっと意味合いが違います。
もし、「chiuso」という表現を用いるイタリア人指導者の指導を受ける機会に恵まれたら、試しに上のような声の出し方をしてみて下さい。恐らく「Apri la gola !! 喉を開けなさい」と指摘されてしまうことでしょう。
イタリア人の指導者にとってchiusoが意味する所は『閉める』感覚では無く、『喉を開けながら覆う』感覚に近いのです。
日本人が同じようにこの感覚で声を出そうとしても、日本語の低いピッチがネックとなり、顎に力が入り、響きが口の中でブロックされてしまいます。イタリア人のように余計な力を顎付近に及ぼさず、スムーズにこの音域を頭声としてクリアーする事が出来ないのです。
この点を克服するには何よりイタリア語の正しいピッチとポジションをつかむことが重要で、マンツーマンでの慎重な見極めが必要になるのです。
独学での勉強ではこの点が曖昧になってしまい、結局、発声器官の各部に無理な力を加える結果に終わってしまいます。
上手くこの音域をクリアー出来ないので『閉じる』『開ける』の2つの方法論が常に対峙したままになっているのです。
塩の辛さ、砂糖の甘さはいくら言葉で説明しても理解出来ませんが、なめてみれば誰でもすぐに理解出来ます。「習うより慣れよ」です。
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